あるあるエピソード2.言葉にできないことを責める

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「悪意のない加害者」にはさまざまなコミュニケーションパターンが存在します。そして、本人はそれ以外のコミュニケーションパターンを知らないため、当たり前だと思っています。今回はそんなコミュニケーションの1つ、「言葉にできないことを責める」についてお話します。

たくさんの方と話したり、自分の経験を振り返ってみると、よく「ちゃんと言語化してくれないとわからない」「論理的に伝えられないとわかるわけがない」「感情だけで話されても困る」といった主張をよく伺います。

何かコミュニケーションのつまずきがあったときに、よく質問責めにしてしまう人がいるのです。「なんでそう思うの?」「どうしてそうなったの?」「ちゃんと説明して?」といったように。何度かそのような質問をされると、最後には相手が答えられなくなってしまい、「ちゃんと言ってくれないとわからないよ」となります。

しかし、このような関わりは加害的になる場合があります。された側にとっては「わかってくれない」「責められた感じがする」「自分がいけないんだ」と感じてしまいます。

一方で、相手を理解したいからこそ質問責めにしてしまうような場合もあります。傷つける意図などまったくないのに、結果的に傷つけてしまうのは不幸なことです。まさに「悪意のない加害者」がやってしまう加害の言動だと言えるでしょう。

このような場面ではどのようにすればよいのでしょうか。いくつか考えられる方策がありますが、その1つは「時間をおく」ことです。ヒートアップして話が進んでいくと、頭が混乱していいたいことが言えなくなったり、ごちゃごちゃしてしまうことはよくあることです。「いま、すぐに」わかりたいのは「悪意のない加害者」側の都合に過ぎません。相手がゆっくりと考えて伝えたいときに伝えられるように伝えられれば十分なはずです。

他にも「教えてもらう立場であると考える」方法も可能です。つまり、感情や感じ方というのは来言語化しなくても伝わる人には伝わるのです。ある意味では「受けて側の能力が低いために、相手に説明負担をかけている状況」とも言えるのです。「悪意のない加害者」は往々にして、相手の責任を指摘しますが、自分のそれを顧みれば、高圧的に「ちゃんと説明して?」などと安易に言えなくなるのではないでしょうか。

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終わりに

G.A.D.H.A(Gathering Against Doing Harm Again:ガドハ)は、大切にしたいはずのパートナーや仲間を傷つけたり、苦しめたりしてしまう「悪意のない加害者」が、人との関わりを学習するためのコミュニティサービスです。

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